ハヤシ歯科レポート

喫煙がもたらす歯周病リスク|口腔から考える“もう一つの健康寿命”

喫煙は肺や心臓だけでなく、「歯ぐき」や「歯そのもの」にも静かに、しかし確実に悪影響を及ぼします。特に40歳を超えた頃から顕著になってくるのが、歯周病の進行と喫煙の深い関係です。
「毎日歯を磨いているのに、歯ぐきの腫れが引かない」
「歯石除去をしても、再発を繰り返してしまう」
その背景に、喫煙習慣が“見えないリスク因子”として作用していることは、決して少なくありません。本記事では、ハヤシ歯科の視点から、喫煙と歯周病の関係性について医学的根拠に基づき解説いたします。

喫煙が歯周組織に与える影響とは
歯周病は、歯の周囲にある歯肉や骨が徐々に破壊されていく病気であり、放置すると歯の喪失に至る重大な疾患です。そして、喫煙者は非喫煙者と比較して2〜7倍も歯周病リスクが高まることが、複数の研究で明らかになっています。
その主なメカニズムは以下の通りです:
① 免疫機能の低下
喫煙は白血球の機能を抑制し、歯周病原菌に対する防御反応を弱めます。これにより、歯周病が進行しやすくなります。
② 血流の減少
ニコチンなどの作用により歯肉の毛細血管が収縮し、歯ぐきへの血流が低下します。結果として、炎症が起きていても“見た目”には赤くならず、自覚症状が遅れることがあります。
③ 傷の治癒遅延
喫煙者は外科処置やスケーリング後の治癒が遅く、同じ治療でも効果が出にくい傾向があります。
④ バイオフィルムの形成促進
喫煙はプラーク中の病原性菌の増殖を促進し、より攻撃的な細菌環境をつくります。

※参考文献:
・厚生労働省「喫煙と歯周病の関係」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-03-011
・日本臨床歯周病学会「歯周病と煙草の関係」
https://www.jacp.net/perio/cigarette/



喫煙者は“歯科の予防”を最優先すべき理由
ハヤシ歯科では、喫煙歴がある患者様に対して、歯周病リスクを十分に考慮した特別な予防プログラムをご提案しています。

具体的には:
・唾液検査・歯周ポケット検査の頻度を増やす
・歯周病原菌の除菌やPMTC(機械的クリーニング)の徹底
・出血が見えにくい“サイレントタイプ歯周炎”への注意喚起
・禁煙支援に関する情報提供とご相談対応
喫煙者の歯周病は「発見しにくく、治りにくい」という特徴があり、ご自身では気づかないうちに深刻な状態へと進行している可能性があります。
ハヤシ歯科では、喫煙習慣を持つ患者様にも寄り添いながら、精密な検査・専門的クリーニング・生活習慣への助言を通じて、歯と全身の健康を支えてまいります。