ハヤシ歯科レポート

食事とpHの関係|脱灰と再石灰化の仕組みを知ることでむし歯を防ぐ

私たちが日々口にする食べ物や飲み物は、歯の健康に大きな影響を与えています。特に「pH(ペーハー)」という、口腔内の酸性・中性の度合いを示す数値が、むし歯の発症や進行に深く関係していることが分かっています。
本記事では、脱灰と再石灰化のメカニズムとともに、なぜ間食の頻度や就寝前の飲食がむし歯リスクを高めるのかを、医学的根拠に基づいてご紹介します。

食後に口の中が酸性に傾く理由
お口の中には常に多数の細菌が存在しており、特にミュータンス菌などのむし歯菌は、私たちが摂取した糖を代謝して酸をつくり出します。
この酸により、「口腔内のpHは急激に低下(酸性化)し、歯の表面(エナメル質)のカルシウムやリンが溶け出す脱灰(だっかい)」が始まります。この状態が続くと、歯は徐々に脆くなり、やがてむし歯へと進行していきます。

pHの回復と再石灰化のメカニズム
食後しばらくすると、唾液の中の緩衝成分(重炭酸イオンなど)が酸を中和し、口腔内のpHは通常40分程度で中性域に戻ります。このとき、唾液に含まれるミネラル成分(カルシウム・リン酸など)が再び歯の表面に沈着し、再石灰化が促されます。
つまり、歯は「脱灰」と「再石灰化」を繰り返しながら日々バランスを保っています。

むし歯を防ぐには“酸性の時間”を減らすこと
脱灰よりも再石灰化の時間が長ければ、歯は自然に修復されます。
しかし、間食の回数が多い方や、長時間にわたって飲食をしている方は、口腔内が酸性の状態でいる時間が長くなり、歯の修復が追いつかなくなります。
さらに、夜間(就寝時)は唾液の分泌量が大幅に減るため、再石灰化が起こりにくく、寝る直前の甘い飲み物や間食は、むし歯のリスクを一層高める要因となります。

※参考文献:
日本歯科医師会「歯科から食育 - 歯とお口のことなら何でもわかる」
https://www.jda.or.jp/park/eatright/




ハヤシ歯科でできるpHコントロールと唾液検査
ハヤシ歯科では、唾液の分泌量やpHの変化を調べる唾液検査を通じて、患者様のむし歯リスクを科学的に評価しています。さらに、脱灰と再石灰化のバランスを整えるために:
・食事と食事の間隔を意識する
・間食を控え、食後はお茶や水で口腔内を中和
・間食を摂りたい場合は食事と一緒に摂るなど工夫して脱灰回数を減らす
・フッ素入り歯磨き剤の活用で再石灰化を促進
・寝る前の飲食は避ける
といったライフスタイルに合った予防指導を行っています。食事をとるたびに起こる「脱灰」と、それに対する「再石灰化」。このバランスが崩れたとき、むし歯のリスクは一気に高まります。
ハヤシ歯科では、患者様の生活習慣に寄り添いながら、目に見えないpHの変動を見逃さない科学的な予防管理を実施しております。歯の健康を守る第一歩として、ご自身のお口の「酸性時間」を見直してみてはいかがでしょうか。